2004年1月5〜2月5日NHK夜の連続ドラマで放送されていた連続ドラマ
23:00〜23:15(全20話)
スタッフ
原作:大島弓子「秋日子かく語りき」
制作統括:銭谷雅義
脚本:浅野妙子
演出:西谷真一、海辺潔
エンディングテーマ:島谷ひとみ「元気を出して」
キャスト
久留竜子:泉ピン子
天城秋日子:宮?あおい
神の使い:京本政樹
久留一夫:津嘉山正種
久留春夫:塚本高史
久留リサ:碇由貴子
笠間米子:安達祐実
原田ゆかり:裕木奈江
他
解説
毎週月〜木曜の23時から15分間ずつ、金曜日に1週間分をまとめて放送するというちょっと変わった形式で、NHKが2002年から始めた通称「よるドラ」。民放顔負けの豪華なキャスティングと 丁寧でしっかりした造りで開始以来、「ロッカーのハナコさん」「ブルーもしくはブルー」「女神の恋」「ニコニコ日記」等数々の傑作を生み出してきました。
放送時間や形式に加え、通常、各ドラマごとに主題歌が設定されるのに対し、この枠では1年間を通して同じ主題歌が使用されるというのも特徴のひとつです。
そのよるドラ枠、2003年度の最後として製作されたのが 大島弓子氏の名作「秋日子かく語りき」をドラマ化した「ちょっと待って、神様」です。
久留竜子(泉ピン子)は、毎日家族の世話を焼く傍ら近所のスーパーでパートタイマーとして働き、昼ドラの展開に一喜一憂する平凡な主婦。24回目の結婚記念にと、夫(津嘉山正種)へのささやかなプレゼントを買っての帰り道、高校生の天城秋日子(宮崎あおい)とすれ違う際、トラックに跳ねられ不慮の死を遂げる。 しかし、どうしても自分が死んだことに納得できない竜子は、神の使いに頼み込み、生き残った秋日子の身体を借りて1週間だけの約束で再びこの世に戻ることに。
秋日子として地上に戻った竜子は、自分の死後も平然として生きる家族の姿にショックを受ける。一方、竜子に身体を貸した秋日子は、不和が続く父母の姿に生きる気力を失っていた。 秋日子として、再び家族の世話を焼き始めた竜子の周囲で、次々と予期せぬ出来事が起こり……。
家族の愛をテーマに、おばさんと女子高生の入れ替わりという驚きの設定で進んでいくこの作品。見るものが夫、妻、息子、娘、親、子それぞれの立場からそれぞれの登場人物の言動に共感したり、考えさせられ、涙を流さずにはいられない、とても見ごたえのあるドラマです。
この作品で京本さんが演じたのは、死者の裁きを行う神の使い。神様だからさぞかし厳格と思いきや、いきなり死者の書を抱えて「やぁやぁ」と小走りに登場する、かなりお茶目で優しい神様です。
ソフトな語り口と穏やかで優しげな視線と一見神父のようないでたちが、ホントにこんな神様がいたら・・・と思わせるに充分なほど魅力的。また、京本さんご自身が拘られたという、手首に嵌めたクロスをかたどったブレスレットが 日によって右手だったり左手だったりと、かなりお洒落な神様です。更に、現代劇では珍しい横髪を耳にかけた”耳かけヘアー”なのも嬉しい見どころです。
出番はさほど多くないながらも、ちょこちょこ登場するたびに、ふわっと何だかほんわかとした気持ちにさせてくれる神様。毎日、天界の小池(?)のほとりに佇み、薔薇の花びらを1枚手に取っては「あと○日です」と秋日子に告げる、この時のちょっぴり済まし顔でポーズを取る、素敵にコミカルな表情・仕草がたまりません。
最初の登場シーンも見どころいっぱいなのですが、個人的にお薦めはココ。序盤で息子・春夫(塚本高史)の留年を知ったものの、何も出来ない自分にショックを受けている竜子の前に不意に現れるシーン。
「どうしました?そろそろあの世に戻りますか?……」と問いかける口調が本当に優しくて、竜子の心情とあいまって思わずホロりときてしまいそうになります。「もし、貴方が生きていたとして、親として傍にいてあげられたら、何かしてあげることができましたか?」と問いかけながら、拝むように合わせた両手を一瞬、唇に押し当てる時の表情が、とてもお茶目な上に「あれこれ世話を焼くばかりが、子供のためじゃないって知ってるでしょ」と諭しているのを如実に現しているようで必見です。
貴方にとって家族とは?
日々の暮らしの中で、つい忘れてしまいがちな家族の素晴らしさ、大切さを竜子たちの言動は改めて教えてくれます。 辛くなったり心が疲れたなと感じたら、このドラマを見てみてください。生きる力と忘れかけていた優しい気持ちを、きっと取り戻すことができるから。
文:紫苑