俳優・シンガーソングライター京本政樹ファンサイト

TBS「高校教師」

1993年1月8日から3月19日まで放送された連続ドラマ
日本テレビ金曜ドラマ枠22:00〜22:54(全11話)最高視聴率33%

スタッフ

プロデューサー:伊藤一尋
脚本:野島伸司
演出:鴨下信一、吉田健、森山享
主題歌:森田童子「ぼくたちの失敗」

キャスト

羽村隆夫:真田広之
二宮繭:桜井幸子
新庄徹:赤井英和
藤村知樹:京本政樹
相沢直子:持田真樹
二宮耕介:峰岸徹

解説

もしかすると、京本さんが演じた役の中で最も有名なのは、組紐屋の竜ではなくこの藤村知樹では?というくらい、多くの人に強烈な印象を残した伝説のドラマ。
日向女子高校を舞台に、教師と生徒の禁断の愛、近親相姦、強姦、同性愛と衝撃的な題材を盛り込んだこのドラマは、放送開始直後から大反響を呼び、最終回では視聴率33%を記録し、「101回目のプロポーズ」や「未成年」などと並ぶ脚本家・野島伸司さんの代表作です。
京本さんにとっても、このドラマをやられる前と後ではイメージはもちろん、演じる役柄までも180度変えてしまった、まさにエポック・メイキングな作品です。

藤村知樹。爽やかな笑顔と甘いマスクで、女生徒の人気を一身に受ける英語教師。彼の下駄箱にはラブレターが溢れ、昼休みともなれば彼のために作ったお弁当を手に、生徒達が列を作り、それを笑顔で受け取る裏で食べきれないと焼却炉でこっそり中身を処分するほど。顧問をしているテニス部でも彼目当ての入部者で賑わう。その人気ぶりは新任の生物教師・羽村隆夫(真田広之)も思わず目を丸くするほど。
けれども藤村自身は、自分に向けられる好意はアイドル的なものでしかないと言い切り、真実の心からの愛に常に飢えていた……。

初回放映時では、爽やかで物分りのよい教師の外面の一方で、教師という存在そのものにどこかシニカルな視点を抱いている、そんな様子もちらりと窺える藤村の印象を決定付けたのが第二話。
今更避けては通れないので(苦笑)、ここはひとつ心を鬼にしてじっくり見どころなど探っていきましょう。

まずは、ドラマ中恐らく最も強烈な印象を焼き付けた問題のシーン。
藤村に手作りマフラーを渡すため、放課後、視聴覚教室を訪ねた2−Bの相澤直子(持田真樹)をレイプしてしまう、あのシーンです。
京本さんご自身が「本気で迫って迫力を持たせた」と言われたとおり、嫌がる直子を床に押し倒し、力ずくでモノにしていく過程は、あまりに惨く思わず目を覆いたくなるほどです。行為の最中、時折漏れる獣のような唸り声が、直子ともども視聴者の恐怖心を煽ります。加えて、この時藤村は最初から直子の上半身には目もくれず、ひたすら下半身にのみ集中しているという点にも注目です。そのあまりに即物性に満ちた行動には、女性はもちろん男性にも嫌悪感を抱かせるに充分すぎるものがあるのでは、と思います。また、途中藤村の手により、もどかしげに直子の細い足からむしり取るように、剥ぎ取られる下着の白さ、これも胸を痛めずにはおかないポイントです。
この辺の小道具の使い方の上手さ、そのタイミングの絶妙さは流石、としか言いようがありません。

その後、ドラマが進むにつれエスカレートしていく藤村の狂気じみた行動。そのどれもが恐ろしく、まるで底なし沼に足を踏み入れてしまったかのように、視聴者は羽村と二宮 繭(桜井幸子)の関係以上に、彼の行動から目を離せなくなっていきます。観覧車の中、恐ろしいまでのどアップで直子に迫るシーンや、藤村といえばあの笑い、と言えるほど鮮烈だった直子に問題のテープを渡すシーンなど、挙げ出すとキリがないのですが、次に注目したいのはドラマも終盤、第9話。
再び直子の家を訪ねた藤村は、問題のテープを奪われた怒りと2人の子供を殺した苦しみを直子とともに味わうため、直子を平手打ちにした後、その痛みを自らも味わうと宣言し、自身の手と腕をナイフで切りつけます。本物のナイフを使用した、と後に明かされましたが、この時の藤村の鬼気迫る演技は本当に何度見ても背筋が寒くなり、痛ましさに身が引き裂かれる思いに駆られます。

そして、このドラマ最大の見所は何と言ってもやはりここ!
同じ9話の翌朝、直子の腫れあがった顔を見た新庄(赤井英和)が、「教師の前に俺は人間や」と遂に藤村に鉄拳を振るい、そのまま藤村の独白へと続くシーン。
以前から京本さんて殴られるのが上手いなと思っていましたが、このシーンでは演技とわかっていても、このままではホントに大怪我をしてしまうのでは!?と思うくらい見事な殴られ・殴りっぷりをお互い見せてくれます。その呼吸のよさ、壮絶さはまさに圧巻!
そして、続く屋上での独白。これはもうとやかく言うことはありません。皆さんの目と耳で彼の姿を、哀しいまでの思いをじっくり堪能してください。ものすごくシリアスなシーンですが、強風に乱れまくる髪も密かな注目ポイントです(笑)。

その反響の大きさゆえ、ファンにとっては少々辛い部分も多かった「高校教師」。実はこれを書いている私自身、この藤村ときちんと向き合うことができるようになるまで丸10年かかりました(苦笑)。
しかし、長くかかった分、今では藤村がとても愛しいです。
狂気と正気の狭間で揺れ・苦しむ藤村を見事に演じ切った京本さんの役者としての凄さ・引き出しの多さに改めて脱帽しつつ、そろそろ筆をおきたいと思います。ビバ・藤村!

文:紫苑

高校教師 DVD BOX

  • 販売元:TBS( 2001-09-19 )
  • 時間:515 分
  • 4 枚組 ( DVD )

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