1997年1月5日〜12月14日に放送されたNHK大河ドラマ
スタッフ
製作総指揮:木田幸紀
脚本:内舘牧子
原作:永井路子
音楽:渡辺俊幸
キャスト
中村橋之助
富田靖子、森田剛
加賀まりこ、上川隆也
大塚寧々、高橋由美子
草刈正雄、原田芳雄
宮本信子、松坂慶子
京本政樹、緒形拳
他
解説
戦国時代に中国の小領主から一代で中国地方のほぼ全域を支配した智将・毛利元就の71年の生涯を描いた、ご存知NHKの第36作目の大河ドラマ。
この作品では、一戦国武将のサクセスストーリという視点だけでなく、家族を愛する一人の男の喜怒哀楽・葛藤、妻の内助の功といったホームドラマ的な要素を 盛り込んだのが特徴でした。
大内義興・義隆、尼子経久・晴久という大勢力に挟まれ、苦労を重ねながらも中国一の武将にのしあがっていく元就(中村橋之助)を、影から支え、時には弱気になる夫を叱咤激励しながら、 前向きに生きる気丈な妻・美伊(富田靖子)。この2人を軸に、個性ある登場人物たちが織りなす人間模様を、テンポのよい展開と大河ならではの豪華で多彩な顔ぶれによる 味のある演技で描き、好評を博しました。
『八代将軍・吉宗』以来2年ぶり3度目の大河ドラマ出演となった、この作品で京本さんが演じたのは安芸日野山城主・吉川興経(きっかわおきつね)。 軍事に優れ、元就を蹴落とさんと仇敵・尼子経久(緒方 拳)と大内義隆(風間トオル)両勢力の間を転々とし、頭角を現すも策謀が過ぎたが故に自らが引き起こした一家の内紛を元就に付け込まれ、幽閉された後、嫡男とともに手にかけられた 悲運の武将。
デビュー当時の『草燃える』の駒若丸、『吉宗』の天一坊がどちらかというとビジュアル的要素を買われての出演だったのに対し、 このドラマでは京本さん自ら「今度は野武士的な役を」との希望を出され、それが叶った形の役柄となりました。
合戦を前に「それがしが先陣を努めましょうぞ」と言っておきながら、あっさり裏切るしたたかな男らしく、常に腹に一物ありそうな雰囲気を漂わせ、 獲物を求めるがごとく、野望に満ちた視線が光る興経。いつになく男っぽいメイクとぎらぎらした感じがたまりません!
また、戦国時代が舞台ということで、烏帽子姿や凛々しい鎧姿が拝めるのも嬉しいところです。
普段とはかなり違った骨太な男らしい魅力がいっぱいの吉川興経。見所も随所にありますが、やはり一番のお奨めは最後の登場となったシーン。
荒縄で後ろ手に縛られ、乱れたポニーテール姿で熊谷信直(永島敏行)を睨み付け「人生はすごろくじゃぁ!」と啖呵を切る興経。 その凄みを帯びた形相と迫力ある演技に圧倒されます。
時代劇の京本さんといえば、いくつになられても美剣士姿をつい願ってしまいますが、 また機会があれば、今度は興経以上に凛々しく猛々しい戦国武将を演じる京本さんの雄姿をいつの日か見たいものです。
文:紫苑
絵:だんな