キャスト
水戸光圀:佐野浅夫
佐々木助三郎:あおい輝彦
渥美格之進:伊吹吾朗
かげろうお銀:由美かおる
柘植の飛猿:野村将希
うっかり八兵衛:高橋元太郎
静香:伊織静香
名張の翔:京本政樹
駒越の清太郎:沖田浩之
スタッフ
制作:逸見稔
プロデューサー:五十嵐通夫 大庭喜儀 山田勝
原作:葉村影子
脚本:櫻井康裕
題字:朝比奈宗源
監督:山内鉄也
ナレーター 杉山真太郎
解説
本家水戸黄門に名張の翔登場!前シリーズで人気を博した名張の翔が、なんと本家水戸黄門にゲストで登場しました!
本家水戸黄門の今回の旅は、薩摩への世直し旅。
薩摩藩次席家老、堂園弾正は、海賊の頭領との噂のある御用商人、大隈屋と結託し、抜け荷を働き私腹を肥やしていた。また、藩主が病に倒れているのをいい事に、側室お欄の方と藩政を思いのままに牛耳ろうとしていた。藩の危機を感じた国家老、伊織頼母は、娘静香を水戸のご老公の元へ旅立たせるのだった。
という事で、薩摩までの前半は静香役の伊織静香を伴っての旅。追っ手の目を眩ませる為という男装があまり役に立ってない気もしますが(だってバレてるし)、それはともかく、それだけ追っ手が強いという事らしい。そういう訳で追っ手は強いみたいです。何しろ顔からして怖いです。南蛮、天竺あたりでも恐れられているらしい、海賊・阿修羅の幻鬼一味。海賊だからでしょうか?異国風の衣装に歌舞いたメイクで、怖さを出しておりました。
また、最終回が通産777回目になるという記念のシリーズのため、北海道と沖縄を除く全ネット局サービスエリアを必ず一度は通るということで、旅のルート決定が大変だったそうです。
さて、本作は「恋しい人は凶状持ち」です。
凶状持ちと言えばお尋ね者、科人。いわゆる犯罪者です。犯罪者は沖田浩之演じる駒越の清太郎です。しかし、清太郎は駿府代官・大貫庄太夫とヤクザの綱五郎率いる鬼綱一家に嵌められたのでした。
箱根を越えたご老公一行は、久能山東照宮への参拝に向かいます。その途中、海辺で乱暴を働くヤクザ者に出くわし、ひとり漁民を助ける渡世人風の男に助太刀します。
この男が清太郎でした。清太郎は、元は網本・駒込の息子。綱五郎と結託し悪事を貪る代官に天誅を加えようとして失敗。逆に罠に嵌められ、人殺しの罪を着せられてやむなく渡世人となっていたのでした。
脛に傷持つヤクザ達は、5年ぶりの清太郎帰郷の知らせに浮き足立ちます。彼を探して許婚・お菊の元を訪れますが、清太郎は依然見つからない。清太郎を探すお菊は、清太郎のばあや・おくめ(新海なつ)の暮す家に走りますが・・・。
ここで、颯爽と現れた名張の翔。赤い鼻緒に赤い笠。誰ですか?と思ったら、川に浸した手拭いで旅の汚れを落とす麗しいお姿は、名張の翔!京本政樹様でした。かげろう忍法帖では紫だったマフラーが赤に変わっております。
お菊を助け、清太郎に危機を知らせた名張の翔は、清太郎の身代わりになって敵を惹きつけます。清太郎と思って手を掛けたヤクザ達は「思わせぶりな格好しやがって!」と怒り出すのですが、そこに一言。
「物騒な段平振り回した挙句に、そんな挨拶はねぇだろう」としたり顔。
もう、いちいちカッコ良過ぎてクラクラしそうです。
鬘もそれに合わせて渡世人風の鬘なのですが、これがまたビックリするほどよく似合い、やはり京様は町人の方がカッコいい(いえ、渡世人ですが)と私の勝手な持論を益々強めた次第であります。
鮮やかな青い縞の着物に腰に回した赤い帯が、京様らしいチョイスで素敵です。
その後も、鬼綱一家に潜り込むために賭場に現れ「あんまり騒ぎ立てると客人に迷惑だぜ」とか、お菊を救い出すときに「お菊さん。落ち着いて、清太郎さんの胸に飛び込みな」とか「裏切ったんじゃねぇ。表返っただけだ」とか、言うことがいちいちカッコいい。
こんな時代がかった(いや、時代劇だからいいんですが)カッコつけた台詞回し、どうでしょうかと思いますが、京本さん演じる翔の口から発せられると、ニヒルな翔らしいなぁと思ってしまいます。
本家水戸黄門では浮くかもしれないと思われる出で立ちも台詞回しも、何故か浮かずに「らしい」の一言で馴染んでしまっている所は、京本さんにしか出来ない荒技を見せ付けられたような気がします。
また、今となってはもう見ることの出来ない、沖田浩之のゲスト出演も見逃せません。
沖田氏もいい男で、髷の似合う貴重な役者さんでしたが、特にこの方は侍役や堅気の町人役が良く似合う気がしますが、ラストで髷を結いなおして登場したとき「うわ。カッコいい」と思いました。
しかし、その後に名張の翔登場を目の当たりにして「ああ、しまった!」と申し訳なくもついつい思ってしまったのは、京本さんが余人の追随を許さない、破格のカッコよさをお持ちだということに他ならないと思います。顔がいいというだけではない、何か内面から発散する綺羅綺羅しいまでのいい男ぶりに涙すら出てきそうな気がします。まさに唯一無二の役者、京本政樹という人の素晴しさではないでしょうか。
「杓子定規は俺の性に合わねぇんだよ。」とせっかくお銀が勧めてくれた旅のお供を断って、一人旅立つ翔。幼馴染・お銀との掛け合いも健在で、翔久々の登場に胸が熱くなるような、次回の登場に期待が持てる作品でした。
文:桂
絵:だんな