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NHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」

1995年1月8日〜12月10日に放送されたNHK大河ドラマの第37回「天一坊始末」

スタッフ

作:ジェームス三木
音楽:池辺晋一郎

キャスト

徳川吉宗:西田敏行
徳川宗堯:西村和彦
徳川家重:中村梅雀
田安宗武:山下規介
お久免:黒木瞳
竹姫:森口瑤子
大岡忠相:滝田栄
加納久通:小林稔侍
徳川宗春:中井貴一
天一坊:京本政樹
語り・近松門左衛門:江守徹

解説

享保の改革を行ったことで知られる名君・吉宗の生涯を描いた第34作目の大河ドラマ。
将軍吉宗といえば、かつて近鉄バファローズの応援コンバットにも使用された、勇壮なテーマをつい口ずさんでしまうほど、松平健さん主演で大ヒットした『暴れん坊将軍』シリーズが有名ですが。
この作品では原作・脚本を『澪つくし』や『独眼竜政宗』で知られるジェームス三木氏が担当。 凛々しく質実剛健な印象の松平将軍に対し、多少やんちゃな部分は残しつつも、主演の西田さんのイメージもあってか、全体的にほのぼのとしたお茶目で、暴れん坊というよりは食いしん坊万歳! と言った感じの人間味溢れる吉宗像を描き、平均視聴率26.4%の好評を博しました。
また、ストーリーテラーとして江守徹さんを近松門左衛門に起用。ひょうきんなキャラクターが好評で、在任中に近松が亡くなると 今度は幽霊として登場する、という掟破りな設定で楽しませてくれました。
大河ドラマといえば、昔から他では類を見ない豪華なキャスティングが売りのひとつですが、今回は物語の要となる西田さん、江守さんはじめ、津川雅彦、細川俊之、大滝秀治、小林稔寺、中井貴一、藤岡琢也、辰巳琢郎、草笛光子、名取裕子、黒木瞳 らベテラン勢が多数を占めたことも話題となりました。

さて、大河ドラマ出演は1979年の『草燃える』での駒若丸以来、実に16年ぶりの出演となった京本さんが登場したのは第37回「天一坊始末」。
タイトルにもなった、品川で天一坊改行を名乗る山伏が将軍吉宗の御落胤を名乗り浪人達を集めたことが将軍家の耳に入り、希代の詐欺師として捕らえられ処刑された天一坊事件の首謀者・天一坊役で出演されました。

真っ白な地に迷路のような菱形の模様が入った着流しに紫と銀の市松模様の帯を締め、後ろ髪を背中辺りまで伸ばした垂れ山伏(総髪)スタイル。常にやや伏し目がちな視線にはらりと垂れたシケが気品のある色っぽさをそそります。時代劇の京本さんといえば、その佇まいの美しさが特筆されますが、 今回もお手本にしたいくらいの綺麗な座姿に目を奪われます。特に、お白州のシーンでは、きちんと脱ぎ揃えられた草履と絵に描いたように揃えられた足の裏の美しさに注目です。
代官・伊奈半左衛門(小林勝也)に詰問されても、眉一筋動かさず自身の出生を語る姿が凛々しく、着物と肌の白さも相俟って神々しさすら感じられるほど。
半左衛門や加納久通(小林稔寺)らが、心当たりがありすぎな吉宗に「わしに似ておるか」と訊かれるたび、「畏れながら美男子にて……」と言葉を濁すのが、 当の本人達のあまりの違いぶりも手伝って笑いを誘います。
最終的には、浪人達から金品を巻き上げるのを目的とし、御落胤を語ったかどで処刑されますが、磔にされ乱れ髪になっても尚、気高さを失わない美しさが目を惹きます。狂気を孕んだ叫びとはまた一味違う、断末魔の叫びともども必見です。

短いシーンながらも総集編にも収録され、多大なインパクトを与えた天一坊ですが、僅か14分ほどの出番であったことが惜しまれます。多くのエピソードを語る都合上、仕方がないこととはいえ、せっかくタイトルにも なった大事件。せめて1回分をかけてじっくり描いてくれたなら…と思わずにはいられない、見事な嵌り役でした。

文:紫苑

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