1995年5月22日から9月4日までTBSの「ナショナル劇場」で放送された時代劇
水戸黄門のスピンオフ作品
スタッフ
監督:矢田清己・山内鉄也・井上泰治・金鐘守 プロデューサー/五十嵐通夫・大庭喜儀・山田勝
原作・脚本:葉村影子
撮影:都築雅人・小林義和
ナレーター:杉山真太郎
制作:逸見稔
特技:宍戸大全
主題歌忍び風
キャスト
かげろうお銀:由美かおる
柘植の飛猿:野村将希
伽羅:中野みゆき
蛍:羽田惠理香
花火の又八:せんだみつお
横笛の小太郎:中村橋之助
名張の翔:京本政樹
他
あらすじ
かげろうお銀は、10年ぶりに、祖父の藤林無門や仲間の忍び達が暮らす故郷に帰る事になった。道中一緒だった柘植の飛猿と柘植の里近くで別れたお銀は、久しぶりに帰る故郷を楽しみに、帰路を急いでいた。
その頃、お銀の帰りを待つ、月ヶ瀬村の藤林一門は、大和郡山藩の実権を狙う一派の放った刺客・髑髏党に襲われていた。突然の夜討ちに、祖父の無門は深手を負ってしまうが、横笛の小太郎の助けにより、危うく逃げ延びる。
一方、故郷を目前に控えたお銀も、動きを察知した髑髏党に襲われていた。無門の命により駆け付けた花火の又八により、一門の危機を知ったお銀は、幼馴染の名張の翔と飛猿の助けを借りて無門の元へ急ぐ。
無門を看取ったお銀は、藤林一門の頭領として、巨悪を倒すために立ち上がった。
佐々木助三郎、渥美格乃新らの助けもあり、無門の復讐と大和郡山藩の危機を救ったお銀らは、水戸光圀の命を受け、直筆の巻物を携え、諸国の政の綻びを正すため、一門を率いて旅立つのだった。
文:桂
解説
『水戸黄門』でお馴染みの、水戸・光圀公の命を受け結成されたお銀(由美かおる)を頭とするくの一集団”かげろう組”。ご老公の目の届かない不正・悪事を 糾すため、仲間の飛猿(野村将希)、又八(せんだみつお)、横笛の小太郎(中村橋之助)らの手助けの下、諸国を旅する彼らの活躍を描いた痛快娯楽時代劇。
毎 回、時代劇の常識を覆すような斬新・奇抜な趣向を凝らしたストーリー展開とかげろう組のお色気満載ぶりが受け、高視聴率を獲得するも、あまりに独創的な造 りが災いしてか、シリーズ化はもとより、近年の水戸黄門関連の特番でも何故かとりあげられたことがない、いまや幻の『水戸黄門外伝』。
この作品で京本さんが演じたのは、お銀と幼馴染の忍び・名張の翔。
お銀同様、ご老公の命を受ける身でありながら常に他の仲間とは一線を画す存在で、ふらりと現れてはお銀たちかげろう組の窮地を救い、またぶらりとどこかへ消えて行く。
今更説明の必要がないほど、一部のファンの間では絶大な人気を誇る翔さん。
クールでいなせな中に随所に京本さん ならではの遊び心が散りばめられ、他人には無関心かと思いきや意外と自分の感情をストレートに出し、時には冗談を言ったり、お銀とのシーンでは子供のよう な口げんかをするなど見た目を裏切る親しみやすさが魅力です。あの組紐屋の竜以上の当たり役だった、と京本さん自ら述懐されたのも頷ける嵌りっぷりはやは り最高の当たり役と言えるでしょう。
普段は紫の着流しに同じく紫のマフラーを首に巻き、ここぞという時には愛用の駒を使って敵を撃退。細身にも関 わらず腕っ節は滅法強く、相当な剣の使い手でもある翔。その人目を惹かずにはおかない容姿から、登場するだけで画面にぱっと花が咲いたような艶やかさと カッコよさに加え、京本さんの武器であり持ち味でもある、あの流れるような殺陣が毎回拝めるという、ファンには堪らない作品でした。
見せ場である立ち回りはもちろん、駒を投げる仕草や何気ない所作にも、京本さんならではの拘りぬいた”決め”が見られ、特に駒を投げ終えた後に見せる微笑は絶品です。
かげろう組、悪役ともに個性的な人物が溢れ、毎回見どころ満載な本作でも特にお薦めはこの3本。
見事な立ち回りがたっぷり楽しめる第二話「鬼蜘蛛の恐怖」
艶やかな女形姿が眩しい第六話「百花繚乱夢芝居」
身内話に絡んで翔の人間臭さが味わえる第九話「忍び文字の謎」
尚、この作品終了直後に放映された水戸黄門・第24部でも3度に渡り、名張の翔が登場しその勇姿を見せてくれています。こちらも合わせて必見です(^-^)。
文:紫苑