TV時代劇シリーズ「女ねずみ小僧」のスペシャル版
1990年9月26日19:30〜20:54放送
「女ねずみ小僧スペシャル1 いけないことだぞ!大江戸マラソン博奕地獄」
キャスト
お凛・女ねずみ小僧:大地真央
留吉・男ねずみ小僧:伊武雅刀
お千恵:島村佳江
お民:森口瑤子
お弓:森沢なつ子
清次:白竜
仁助:笑福亭笑瓶
半助:桜金造
末安主水:早川雄三
大黒屋幸助;北村総一朗
小曽間寒月:我王銀次
金:野々村真
田坂新吾:京本政樹
ほか
あらすじ
頭のお凛を始めとして、黒装束に身を包み、あくどく稼ぐ大店から大判小判をちょいと頂いていくのはすべてかよわき(?)女達。そこへお凛に惚れてる男ねずみ小僧留吉、ねずみ小僧お縄に使命感を燃やす熱血、だけどいまいち抜けてる定町廻り同心田坂新吾、義賊に憧れ留吉に弟子入りする桜吹雪の刺青をした一風変わった青年金。個性豊かな面々が揃えば、今宵もお江戸の町は大騒ぎ。
折しも江戸では毎年開催される早駆け競争へ人々の関心は集まっていた。そんな中で本命とされていたオイチの又八が何者かに殺される。同心田坂新吾は早駆け競争にことよせて、裏で何者かが動いていると睨む。
そんな中、巷ではねずみ小僧にもらった金で博打に手を出した町人が、賭博を行っている大黒屋からひどい取立てを受けて苦しんでいた。「ねずみのせいだ。ねずみがお金をくれなきゃ博打に手を出すこともなかった」と叫ぶ娘の声にお凛はひどいショックを受ける。
だが、町人から大金を巻き上げるため、本業は材木問屋である大黒屋と加賀藩江戸家老末安主水とが組んでいかさま賭博をしていると知ったお凛以下ねずみ小僧たちは二人を陥れるため立ち上がった。
早駆け競争において八百長競争の獲物を探している大黒屋たちに身分を偽って近づき、大博打に乗る振りをするお凛たち。忍び崩れの用心棒小曽間寒月に賭けてくる大黒屋たちに対して、お凛たちは早足の飛脚を装った留吉を賭けの対象にする。
又八亡き後の大本命とされている脇瓜、忠臣蔵で名高い堀部安兵衛の子孫堀部安次郎、大黒屋たちの悪巧みを潰すためには勝てばいいと、これ以上の良策はない!というどこかずれた自信満々のやる気のもと参加した田坂新吾、そして、実は刀を腰に差してないとバランスのとれない寒月に、途中からは「お凛と夫婦になる」という甘いエサにつられた留吉。それぞれの思惑を胸に早駆け競争の幕は切って落とされた!さて、勝敗の行方はどちらに?
見どころ
何はさておき、さすが三谷幸喜作品!と手を打ちたくなるような笑いのエッセンスが随所にちりばめられています。筋立てや登場人物の配置、背景などはしっかり時代劇なのですが、めった遊び心旺盛です(^^)。お凛の啖呵はかっこいいし、悪の親玉江戸家老末安主水はどこかコミカル。相手を騙す際の仕掛けはギャグとしか言い様がありません。
そんな中冒頭から、青と銀の亀甲柄の着流しに同心の羽織をさらりと着こなし、着物の裾がめくれるたびにサテンの紫がちらりと覗くこじゃれた(ど派手なともいう)着物で江戸の町をねずみを追い掛け回す同心田坂新吾として京様は登場します。
きりりとした端整な顔立ち、ねずみと対峙したときの毅然とした態度は、黙って立っていれば、江戸中の娘が溜息をつき、顔を赤らめて通り過ぎるような、役者絵から抜け出てきたような美形同心。それなのに投げつけられた火炎玉に腰を抜かし、顎でこき使う手下の半助には呆れられ、傍目にはちょっと違うんじゃ(^^;)と思える考えを最上の良策と悦に入る姿はどうしても笑いを誘い、親しみやすく微笑ましい田坂様に惹きこまれてしまいます。
はっきり言って筋書き的には田坂様はほとんど関係ありません。ですが、その一途さ、純粋さ、そして抜けさ加減が、物語を柔らかく、ユーモラスにしてくれます。見ている者の肩の力をほっと抜いてくれる、なくてはならない和み的存在です。
そして何より、京様ファンにとっての一番の見どころは早駆け競争でしょう!着物をめくり上げ、白く細い滑らかな足を惜しげもなく晒して颯爽と走る京様からもう目が離せません! 出番も多く、可愛く、かっこよく、おもしろい京様をしっかり堪能できた作品でした♪
文:さくら