1996年配給の映画(東北新社、キングレコード)
スタッフ
監督:津島勝
原作:鳴海丈
脚本:中本博通
撮影:江原祥二
照明:中山利夫
音楽:坂口博樹
主題歌:冴木涼介(京本政樹)「まるで悲しみが雨のように口づける」
キャスト
榊修羅之介:京本政樹
天海:隆大介
伊達政宗:中村敦夫
真夕:今村理恵
獰頑:大和武士
阿国:戸川京子
澪:田賀久美子
お蓮:三浦理恵子
朝比奈和之進:島村かおり
魔狼次:高野拳磁
世鬼乱堂:伊藤敏八
伊村大膳:遠藤太津朗
エマニュエル・ヤーブロー
あらすじ
舞台は江戸初期。南倉藩の姫君・真夕姫が何者かに誘拐された。引き換えに藩が所有する宝刀・銀竜剣を渡せと迫られる。家老の伊村大膳は、比類の無い剣の使い手である美剣士・榊修羅之介に姫君救出を依頼する。
修羅之介は、無事真夕姫を救い出すも、銀竜剣は謎のくノ一たちに奪われる。伊村の態度に不審を抱いた修羅之介は、真夕姫より銀竜剣の由来を聞きだし、剣を取り戻す事を誓う。
銀竜剣は、豊臣家によって滅ぼされた北条家の秘宝に由来する剣で、もう一対の宝剣・鳳凰剣と一揃いで秘宝の謎を明かすのだった。
銀竜剣を手にした謎のくノ一・出雲阿国一派は、北条家の末裔でお家再興の宿願を果たすために秘宝を狙っていた。
既に鳳凰剣を手にしていた伊達政宗は、幕府転覆の野望のため、怪僧・天海僧正と、邪剣士一族・獰頑を使い、銀竜剣を手にして秘宝を手に入れようと企んでいた。
一方、南倉藩家老・伊村は、銀竜剣を取り戻そうと、魔狼次を雇い修羅之介を襲わせる。立ち塞がる敵を相手に、ひとり戦う修羅之介は、やがて女スリ・お蓮の協力を得て、秘宝の謎を解いてゆく!
解説
京本政樹、時代劇初主演映画となった記念すべき作品です。
その芸歴や力量からすると遅過ぎるほどの主演映画に、見る側の期待も高まります。
中村敦夫や隆大介の怪演ぶり等、脇役の役者さんたちも見所も満載です。
修羅之介と戦う男たちに、プロレスの高野拳磁、この作品のために来日したアマチュア相撲世界チャンピオンのエマニュエル・ヤープロー(体重280キロだそうです。京様の何倍でしょう?)など、「凄い」の意味を取り違えそうな顔ぶれです。
本作品は、京本さんが持てる魅力の全てをつぎ込んだと言っても過言ではないほど、その魅力が如何なく発揮されています。
特に凄いのはなんといっても殺陣。
京本さんの殺陣の魅力といえば、確かな技術に裏打ちされた技の細かさと、スピード感からくる真に迫った迫力を思い浮かべますが、この映画にはその魅力が凝縮されています。
細かな部分まで凝りに凝った、徹底的に「見せる殺陣」と、まるで猫科の獣のように、全身をしなやかに激しく動かす京本さんの美しすぎる動きに圧倒されて、凄いと思う事すら忘れて見入ってしまいます。
出てくる出演者のほとんどが敵という特殊な状況の中で、何度となく繰り広げられる立ち回りシーンは、松竹の明暗を駆使した名照明師・中山利夫さんの照明と相俟って絶妙な美しさを見る側に与えてくれます。
また、時代劇で本格的デジタルSFXを駆使した作品というのも見所のひとつではないでしょうか。
出雲阿国、伊達政宗、天海僧正など歴史上の人物の意外な解釈も、伝奇時代劇好きにはたまらない展開で見る側を飽きさせません。
原作者の鳴海丈氏が京本さんをモチーフに描いた作品だけあって、主人公・榊修羅之介は京本政樹以外の役者では務まらないほど、美剣士俳優・京本政樹の存在感を遺憾なく発揮できるキャラクターです。
その妖艶さ、剣の腕前、影のある面差し、全てが魅力的で、市中を歩く事がすでに犯罪なのではないかと心配になります。(他の作品でもよく心配になりますが)
四鎌紋入りの紫の着物をさらりと着流し、下ろした髪を後ろで束ね、特注の丈の長い赤い刀を無造作にさした姿は、ため息が出るほどカッコいいけど、冷静に考えてみると、京本さん以外の役者さんがやったらとんでもない事になるのは間違いありません。
この映画で、「美しくて艶っぽいのにとてつもなく『男』を感じる」という、京本さんの最大の魅力の一片が完成された感もありました。
そして、冴木涼介名で歌う主題歌「まるで悲しみが雨のように口づける」も、当サイトのランキングでも5位に入る、ファン一押しの名曲!この映画のエンディングで初めて聴いた時には、「なんていい曲なんだろう」と聴けたことの幸せ感に涙が溢れました。
京本ファンならナニを置いても見て欲しい作品のひとつ。細かな所作から、動きのひとつひとつ、瞳の動きから指先まで全てに時代劇俳優のオーラが溢れており、見返す度に京本政樹の魅力にどっぷりと嵌れる作品です!
ところで、現付き人の松山浩彦氏(作品では松山比郎名)が本作品の一体どこに出ていたのか、誰か私に教えて下さい。いつも気にして見ているのですが、途中からつい京サマを見るのに真剣になってしまうので判らなくなってしまうのです。
文:桂
絵:だんな
皆様の感想
小雪さん
余す所無く京本さんの魅力、いえ!男の色気が漂っていてすっかり修羅さま(京様)命♪になってしまいました・・・
スピード感のある”刀さばき〜殺陣”に女心を掴んで離さない”流し目”etc…
今更ながら【京本政樹は時代劇の人】と痛感しました。
昔を思い出すシーン。
一家惨殺、そして誤って父を手にかけてしまった時の切ない表情が、たまらなく愛しくて泣けました(T_T)
修羅さまの次はやはり『狂四郎』ですよね?是非是非実現して欲しい!!
水無月さん
修羅之介斬魔剣。
京本さん主演のこの映画を知ったのは、京本さんが書かれた本、メタ時代劇で、でした。
メタ時代劇でこの映画のことを知った私はすぐにこの映画をレンタルショップに借りにいきました。
そして京本さんがこの映画に主演されることになったきっかけや撮影の時のお話などを読んでいたので、
期待に胸を躍らせながらこの映画を見始めたように覚えています。
この映画を見て一番印象に残ったのは、京本さんの静の演技でした。
修羅之介の殆ど動かない表情、抑揚を抑えた台詞回し。
抑えた静かな演技でありながら、映画を見進めている内にその人となりが鮮明に伝わってきて、
ニヒルで妖艶でありながら、情の深さを持っている修羅之介というキャラクターの魅力に惹きこまれ、
また、京本さんの素晴しい静の演技にとても感動しました。
また平素の彼が表情少ないからこそ、修羅之介と名乗る以前の彼の、
若々しく、感情豊かな姿がとても印象的に、現在の修羅之介と好対照に映りました。
この映画の中で私が好きな場面の一つで青龍剣を魔狼次に奪われそうになった時に、
一度は彼に剣を奪われながら取り戻すという場面があるのですが、その時のしてやったり、
という笑顔があまりに明るく、楽しそうで、普段の修羅之介とは対照的で、
この映画の中でもその表情は特に印象に残っています。
そしてこの作品では修羅之演じる京本さんの鮮やかな華麗な殺陣、
エンディングの京本さんの切なく響く優しい歌声もとても素敵で、実は私はこの時初めて京本さん歌声を聴いたので、
その歌声にもとても感動しました。
俳優としても、歌手としても京本さんの魅力が一杯詰まったこの作品は、大好きな映画の一つです。
咲さん
この作品は大好きで繰り返し見ました。
とにかく修羅之介様がカッコいい!
最初の南倉藩を化物が襲うシーンでは、修羅之介が現れた時に空気がスッと変わりました。
「外道!」と一言化物に投げかけ、向かってきたところを真っ二つに斬るシーンが印象に残っています。
そのあとの刀を収めるところもカッコいい!!
大好きなシーンを挙げると沢山ありますが、修羅之介の台詞で頭から離れないモノがあります。
自ら命を絶とうとしている女に「生きるも地獄。死ぬのも地獄。ならばこの世の地獄にまみれ尽くせい。」と言う台詞・・
修羅之介の悲しい過去を台詞に重ねて見てしまいます。
この時の横顔も凄く綺麗でした。
最後のエンディング「まるで悲しみが雨のようにくちづける」
には最初ビックリしましたが、大好きな大好きな歌です!
こうして感想を書いていましたら、また最初から観たくなってきてしまいました・・
真理さん
紫の着流しに後ろに結わえただけの髪、京様の怪しい魅力が満載でした。
数々の時代劇を演じて来ただけの事あって、殺陣・身のこなし・刀を鞘への納める仕草、全てにスキがありません。
カッコイイこの一言に尽きます。
時代劇とはいえ、ストーリー的に??と思う箇所も見受けられましたが、それはそれで結構楽しめました。
主要登場人物を有名俳優で固めているのは流石なのですが、それ以外の登場人物の演技の拙さが目立ち残念だなと思う場面も・・・
しかし全てにおいて京様の演技が際立っていましたね。殺陣の部分でも京様が相手に合わせているのが良くわかります。
ちょっとドキドキな場面もあったのですが全然嫌らしくなく、かえって妖艶な魅力でカバーしているのは流石です。
京様もこういう演技をするのね、というような意外な一面を見ました。
京様の殺陣のシーンも多く、着流し姿が堪能出来る一作です。
こんなにも紫の着物が似合う俳優って、京様だけなのではないでしょうか?
エンディングが「まるで悲しみが・・・」なのが、かなりびっくりした。
音楽が流れ出した時、え!え〜!!って・・・
でもストーリーの総集編?っていうのかな、エンディングの時に流れる画像に重なっても、全然違和感なかったです。