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TBS サスペンス特別企画「夜の終る時」

2007年12月10日に月曜ゴールデンで放送された2時間サスペンスドラマ

スタッフ

原作:結城昌治『夜の終る時』
脚本:鎌田敏夫
製作:ザ・ワークス、TBS

キャスト

菅井刑事:岸谷五郎
宮坂千枝:余貴美子
安田刑事:鳥羽潤
千葉(トン公):ウド鈴木
安部刑事:甲本雅裕
森戸課長:東根作寿英
別所ひろみ:橘実里
徳持刑事:根本博成
関口隆夫:樽沢勇紀
腰木主任:寺田農
瀬尾刑事:京本政樹(友情出演)
大沢課長:西岡徳馬

あらすじ

富士見署の刑事課、強行犯捜査係の菅井刑事は、いわゆる叩き上げの刑事だった。主任の腰木と共に数々の事件を解決してきた、現場主義の刑事であった。まだ駆け出しの安田刑事は、教わることの多い日々を過ごしていた。
菅井が何かと衝突するキャリア組の森戸係長、一歩引いて内部を見ている阿部刑事、強面だが正義感の強い徳持刑事、そしてクールで冷静な瀬尾刑事と、多彩な顔ぶれの強行犯捜査係だった。

関口隆夫という、元暴力団員で多数の恐喝事件を起している男を逮捕に向うと、あと一歩というところで逃げられてしまう。逮捕状が出たことを事前に知らなければ出来ないことであった。しかも、関口の恐喝のネタは署内から洩れているとしか思えなかった。
徳持刑事は、関口と同郷だ。しかも高校駅伝に共に出場している。安易な疑いは持つまいとするが、事件に関連して訊きこみに行った徳持刑事が深夜を過ぎても戻らず、署内は騒然となった。
翌朝、北千住のグリーンホテルで徳持刑事の全裸死体が見つかった。部屋には指紋も遺留品も残っていなかった。証拠になるものは何も無い。部屋を取ったのは関口らしい。二人が繋がっていたと思う捜査員たち。

菅井刑事は、数年前に捕まえた強盗犯の宮坂という男の妻、千枝に何故か惹かれ、面倒をみていた。妻も子も亡くし、捜査のために死に目にも逢えなかった菅井と、夫が強盗犯で捕まった千枝。心が荒んでいた二人は、いつしか離れられない関係になっていた。
関口は、この宮坂という男の事件にも少なからず関わっていた。

関口を追う捜査員たちは、関口が元いた組の組員、トン公から関口の最近の女を聞きだし、女を張り込んで関口を捕まえる。
しかし、一向に口を割らない関口は、ある日トン公が差し入れたドラ焼きを食べた途端、悶絶して死んでしまう。
関口と繋がっていたと思われた徳持刑事が、数年前に生活安全課の刑事が湯島のホステスと麻薬中毒になり、当時の署長が警視正になる瀬戸際という時期だったため、署を挙げてもみ消した件を明るみにしようと躍起になっていたことを知り、死んだ徳持刑事の正義感の強さを感じて、関口との関係に疑問を抱き始める。

容疑者として浮上した組長の赤座を取り調べ中、赤座の闇金をネタに関口が脅していたことを突きつける、菅井刑事。
数日後、トン公も殺されて発見された。発見したのは瀬尾刑事で、「何となく」見つけたと言う。
徳持刑事の殺しに疑問を抱き始めた安田刑事は、署内に一連の殺しの犯人がいると感じ、その疑問を腰木主任に語り始めるが・・・・・・。

解説

原作は「夜が終わる時」というタイトルで、結城昌治作の、第17回日本推理作家協会賞受賞作。脚本が鎌田敏夫という、重厚感のある作家陣に恵まれた作品です。

宮坂を捕まえようと、必死に追い掛ける富士見署強行犯係の捜査員たち。もっと必死に逃げる宮坂。緊迫したシーンからいきなり始まりました。始まって、あまりにたくさんの人がいっきに出てきて、名前が混乱するのを必死で理解しようとしているうちに、どんどん話が転がっていって、ついて行くのが大変でした。
サスペンスものですから、犯人は誰か?というのが最大のミステリーな訳ですが、この配役なら、寺田農さんか京本さんか岸谷五郎さんだろうなと思いながら見ていました。
京本さんの瀬尾刑事が犯人にしては、微妙にストーリーに絡んでこないので、それなら寺田農さんの腰木主任か?と犯人探しも楽しくなってきた中盤、関口を菅井刑事が痛めつける道場のシーンで思わせぶりに姿を消したり、ドラ焼き食って関口が死んだところで、ああ、これはもしかして京本さん犯人なのか?と思わせぶりな行動も。
なのに、犯人をあんなに早くバラしてしまうのはどうだったのでしょう。せめて、トン公が死体で見つかった井戸のシーンの後でもよかったのではないでしょうか。
あの井戸に、竹竿差して突付いている京本さんはぜひ見たかったです。

なにより、京本さんのボウリングシーンがよかったです。(ってそこかい!)久しぶりに見た投球フォームは、相変わらず綺麗なフォームで賞。(必殺仕事人放映当時、番組対抗ボウリング大会で、フォームが綺麗で賞を貰っていました)
そして髪型が、終始耳かけヘアで美しさが際立ちました。顔立ちが綺麗な京本さんですから、出せば出すほどインパクトが大きいです。綺麗だ、美形だと前半のほとんどはそればかり呟いてしまいました。
京本さんが走るシーンが随所にあり、他ではあまり見られない走りっぷりは、貴重かなと思います。だけど、他の刑事役の方に比べたら引き気味で、思いっきり走らされているのは京本さん以外の人だったり、格闘シーンもその場にいる割には控えめで、ですが重要なところはキッチリ押さえていて、やはり大御所感がありました。

関口に宮坂千枝との関係を脅され、結局は自分も犯罪に加担し、最後には自ら手を染めていく菅井刑事の心の闇の部分の変遷がもう少し見たかったです。押し寄せる日本海の荒波で、全て水に流されてもちょっとなと思いました。
安田刑事が気付いた、菅井刑事が自分を「スガエ」と呼んだ新潟弁、全く気がつきませんでした。ボイスチェンジャーで話す声を視聴者に聞き分けろというのには、少し無理があるかもしれません。
あの新潟弁の発音を、知らない人も多かろうと思いますので解説します。
新潟地方では文中の「い」と「え」の発音が曖昧です。

例文 新潟駅行きのバスが発車します。

新潟弁での発音は
「にいがた いき えきの バスが発車します」

これは少し極端にした例ですが、そう聞こえるかも知れない程に文中の「い」と「え」の発音が曖昧になります。だけど、新潟を「にえがた」とは言いません。念のため。越後は、地方によって「い」と「え」の中間の発音(ここが曖昧さなんです)にはなります。(新潟はやたらに広く山も多いので、ひと山越えると方言も違います)
音声でお伝えできないのが残念です。
そして、故郷のために一言。いくらなんでも苗字を、ましてや自分の苗字を発音し間違える人は、方言がそうだったからといっているわけありません。今現在。
私の叔母は「マツイ」という名前ですが、「マツエ」とは呼ばれていません。(でも名付けた祖父母が「マツエ」のつもりで名付けた疑いは濃厚)
それと冬の日本海。確かにうっかり見ると死にたくなるような光景ですが、あそこまで荒れることは稀だと思います。

ラスト近くの余貴美子さんの迫真の演技に驚きました。凄い女優魂です。だけどそれを相手にしている京本さんの容赦の無い捕まえ方も凄かったです。
追い詰められ、悲鳴を上げながら逃げる千枝の血だらけの手を金網から離して引きずる、手を伸ばした先の携帯をすかさず蹴る、そして、容赦と言う言葉を微塵も感じない服の掴み方!相手も形振り構わぬ余貴美子さん、押さえる京本さんももの凄い勢いで服を掴んでいます。二人共もの凄い迫力です。よくボタンが飛ばなかったと思います。あれを見られただけでお腹一杯な感じです。

一番最後、逮捕された菅井刑事の乗った車を見送る刑事たち、というシーンで、ド真ん中で、もの凄く場所を取って仁王立ちの京本さんが素敵過ぎました。どうしてあんなに場所取っていたんだろう?
なんか、『スター京本政樹』って感じで良かったです。(なんだそれ)

放送された年にさかのぼる事二年前に撮影された、このドラマ。二年の間に京本さん自身の髪型ががらりと変わり、懐かしさを持って見る事が出来ました。
「デカが、何のために生きてるかなんて、考え出したら足を踏み外すんだよ」と渋く意味深に呟いた言葉が印象的な、硬派なドラマでした。

文:桂

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